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日蓮大聖人・池田大作

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発刊の辞  

「平和提言」「記念講演」「論文」(池田大作全集第1巻)

 
前後
1  創価学会創立六十周年の記念事業として、池田名誉会長の著作を集大成した『池田大作全集』がぎ発刊される運びとなったことは最大の喜びである。しかも全七十五巻が予定されており、その巨大な生命のほとばしりとその労苦の結晶たる偉大なる業績に、あらためて深い感銘を覚えるのである。
 この度の全集の「序文」をお願いしたところ、「本来は著者自身が執筆するのが自然かもしれないが、今回の全集の発刊に関する一切は『刊行委員会』に任せてあり、更にこの全集が創価学会総体の結晶という意義を備えたものにしたいという皆さんの意向を思う時、私の序文というよりも会長にお願いしたいと思っている」との言葉をいただいた。
 誠にもったいないことであり、もとより、その任に耐え得るものではないが、全集発刊に対する感謝と限りない報恩の念を抱きつつ、こうした名誉会長の弟子への熱い心遣いの中にも、創価学会の原点である「師弟の道」を教えて下さっていることに思いを深くし、ここに「発刊の辞」を記させていただくものである。
 池田先生が会長就任以来、今日に至るまで、文字通り止暇断眠の戦いで切り開いてこられた数々の偉業は筆舌に尽くせるものではない。
 創価学会の世界的発展はいうまでもなく、創価大学、創価学園の創立、民主音楽協会、二つの富士美術館、東洋哲学研究所の設立等、これらのどれ一つとっても、それだけでも成就することさえ至難の業であろう。更に世界平和実現のために、仏法根幹の平和の使節として、地球的視野に立った平和・文化運動の大道を先駆されていることは周知の通りである。
 名誉会長は常々、これらの事業の全ては初代会長の牧口先生、第二代会長戸田先生の偉大さを証明するために、その構想を何としても実現しようとの一念で走り抜いてきたと語られている。牧口初代会長の「殉教」という不退の原点、そして戸田第二代会長が示された「広布の原理」、更に池田第三代会長によるその実現に向けての限りなき実践と独創による展開によって、今日にみる未曾有の広布の道が開かれてきたのである。
 従って名誉会長のあらゆる指導、論文、詩等の奥底には、歴代会長の崇高なる広宣流布の精神が脈々と流れているのである。その意味からも本全集は、「創価学会総体の結晶」であり、まさに「師弟一体」の凝結であり、創価学会の全ての輝かしい精神遺産が秘められている「三代会長全集」ともいうべきものである。故にここには、未来永劫にわたる一切の広宣流布の規範、学会精神の真髄が収められているといっても過言ではない。
 また、青年部が名誉会長の監修を得て編纂した『三重秘伝抄に学ぶ』『当体義抄に学ぶ』等の各種の教学研究の成果が本全集に収録され、後世に残されることになっている。この事実は池田門下生である現在の青年部こそこの「師弟の絆」を誤りなく継承し、二十一世紀の未来に、更に大きく広宣流布の道を開きゆく真実の後継者であることを証明する意義も込められていることを知らなくてはなるまい。
 更にこの全集には、「論文」「対談」「随筆」「小説」「詩歌・贈言」「日記」「講義」「講演」、そして、揮豪、写真、年譜等、広範な分野にわたって収録されることになっている。この中には、一昨年から先生が命を削って雨のように降り注いでおられる指導はもとより、二十一世紀から尽未来際に至るまでの未来を指向する指導、著作が全て網羅されるであろう。
 百年、二百年後の若き学徒達がこの全集をひもとく時、恐らくあらゆる険難を乗り越えるための解答を見出すであろうし、そこに常に新たな勇気と力を得ながら、過たずに広布の大道を歩みゆけることを確信するものである。
 ともあれ、時代を創り、人類の歴史を動かす原動力として、「思想の力」「言論の力」に勝るものはない。アフリカの医聖として知られるシュバイツアー博士は、かの栄華を極めたローマ帝国が滅亡したのは、結局のところ国家を支えるに足る思想を持った世界観を生み出すことができなかったからであると指摘し、こう語っている。
 「私たちは歴史を新しい思想から新しくきずきあげなければならない。全体にとっても個人にとっても、世界観のない生活は、高い方位感覚がくるった病的状態である。(中略)思考から生まれ、思考をよりどころとするものだけが、全人類にとっての精神的な力となることができる」(国松孝二訳)と。
 まさに至言である。建築物をはじめ形ある物は、時がたてば悉く変化し、破壊されてしまう。永久に残るのは言葉であり、思想である。生命と宇宙を貫く普遍の法である仏法の視座から思索し、徹底した実践行動の上から残されている名誉会長の言論は、偉大なる精神の力として新たな歴史を創造する源泉となることは疑いないと確信する。
 このような先生の思想、言論を収めた珠玉の本全集は、後世の創価学会の魂であり、信心の精髄であるのみならず、きたるべき世界宗教を確立する永遠の礎石となるであろう。
 願わくは、この全集を読者諸賢にとっての広布開道と人生行路の、確かな指標としていただきたいものである。
 昭和六十三年五月三日
 創価学会会長  秋 谷 栄之助

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