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日蓮大聖人・池田大作

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如来寿量品(第十六章) 十界互具〈上〉…  

講義「法華経の智慧」(池田大作全集第29-31巻)

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1  「自己中心」の闇をたたき破って仏界の太陽は昇る
 斉藤 十界論を論じていただきましたが、読者から大きな反響がありました。その声を少し紹介させていただきます。多かったのは、仏法対話への意欲を新たにしたという声でした。たとえば、「大変にわかりやすく、納得しました。ますます確信を深めて、大いに十界論を語っていきます」と。
 また、境涯論としての十界論に改めて注目された方々も多かったようです。「境涯論という人生の鏡を知ることで、これからの人生をもう一歩深く歩めそうな気がします。また、そうしていきます」「読んでいくうちに、境涯が広がっていくようです」等々と。
 池田 すばらしいことだね。人間は、成長しないといけない。いわんや指導者は、これでいいと思ってはいけない。「自分はこれでいいのか」「生活はこれでいいのか」「地域はこれでいいのか」。一つひとつ、きちっと見ていくことです。それでこそ、法華経という「人間革命の経典」を学んだことになる。
 本来、人間ほど弱いものはないかもしれない。人間ほど醜く、残酷なものはないかもしれない。その反面、人間は「心」ひとつで、いくらでも強くなれる。いくらでも崇高になれる。心には色もない、形もない、長さもない。しかし心は無限大に広がっていく。
 今の自分の境涯──これは、いわば仮諦の仮の姿です。じつは、変化、変化で、一瞬も止まっていない。
 遠藤 止まっていないと見るのが「空諦」ですね。
2  「日に新たに」リ−ダ−は成長を!
 池田 「空」だから、どんな自分にでもなれるのです。今の姿に、とらわれてはならない。変化、変化です。問題は、よい方向に変化しているのか、悪い方向に変化しているのかだ。中間はないのです。
 須田 「自分は成長がなくて」と言う人がいますが、甘えた言葉ですね。「成長がない」ということは「退歩している」ということですから。
 池田 「進まざるは退転」です。とくに、組織の上のほうが成長を止めたら、こんな不幸はない。皆が、かわいそうです。だからこそ、「人間革命」です。
 「日に新たに、日に日に、また日に新たなり」(『大学』)だ。自分が止まったら、周囲も後輩も止まってしまう。自分が止まってしまったリーダーにかぎって、威張るし、感情的に人を叱る。威張ったり、怒ったりするのは畜生界、餓鬼界です。ほめたたえるのが菩薩界です。人をたたえることです。学会員は宝の人です。尊敬し、一緒に「いい人生を生きていこう」と励まし合っていくのです。そのために組織がある。今こそ幹部自身が境涯革命する時です。その総立ちの「うねり」が、一念三千の理法で、社会をも変えていくにちがいない。
 斉藤 はい。世の中全体が暗く、無軌道になっていますが、そうであればあるほど「このままでは、日本は、どうしようもない」「どうしても人間の根底から変えていく以外にない」という声が高まっています。
 遠藤 対症療法じゃダメだ、根底から治療しなければ、ということですね。教育改革を、といっても、その根底となる哲学、人間観、人生観を問わずしては、小手先の技術論になってしまいます。
 須田 へたをしたら、悪い政治家に利用されるだけでしょうね。
3  「心の不思議を」を知る人が仏
 池田 日蓮大聖人は「病の起りを知らざる人の病を治せばいよいよ病は倍増すべし」と仰せだ。
 境涯革命──そのポイントは「心の革命」にある。「一念の革命」です。「心こそ大切」なのです。その大切な心が、どっちの方向を向いているのか。
 もっと健康になって、広宣流布に活躍していこうという心なのか、一歩引いて、病気になってしまう心の動きか。もっと成長し、皆さんに喜んでいただこうという心なのか、組織や立場を利用して、威張っていこうという心なのか。タッチの差だが、結果は百八十度、違ってくる。
 この「心の微妙さ」が十界論の真髄であり、十界互具論の真髄でもある。大聖人は、こう仰せだ。「心の不思議を以て経論の詮要と為すなり、此の心を悟り知るを名けて如来と云う
 斉藤 仏とは「心の不思議」を知り究めた人のことである──ということですね。
 池田 そうです。それを体得するには修行しかない。ある有名な柔道家がいた。師匠に投げられて、投げられ抜いて、くたくたになって、どうしようもなくなった時に、ふっと心に宿るものがあった。そのとき、心技一体になって、勝つことができた、と。そういう話がある。本も、よくわからなくても、一生懸命に読んでいくうちに、何となく、わかるようになってくる。パッと、分かるときがくる。何でも「心」なんです。
 仏道修行も、学んで、戦って、それで仏になる。境涯革命と何回、口で言っても、何も変わらない。組織の上に乗かって、人に苦労させ、自分は楽をしている。それでは堕落です。仏になど、なれるわけがない。一番、大変な思いをした人が仏になるのです。

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