Nichiren・Ikeda
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1 大道(1)
われらは詠い、われらは歌う!
広宣流布の天空には、壮大なロマンの、詩と歌の虹が輝く。
私は、なぜ詠うのか──。
悲哀に沈む友の心に、希望の火をともし、
勇気の炎を燃え上がらせるために!
あの胸に、この胸に、
人間讃歌の音律を響かせ、
共に正義の大道を歩み抜くために!
私は、なにを詠うのか──。
無限の力を秘めたる人間の可能性だ!
吹き荒れる試練の嵐に敢然と立ち向かい、
「苦悩」を「歓喜」に変え、
人生の凱歌を轟かせる
庶民のヒーロー、ヒロインの崇高な姿だ!
泥沼に咲く蓮華のごとく、
清らかにして、美しく、強き、その魂だ!
大宇宙をも包み込む
広大無辺な、その心の豊かさだ!
人間!
おお、人間!
なんと尊く、気高きものか!
私は、合掌する思いで、
わが友の人間革命の勝利劇を詠い続ける。
中天に燃える、夏の太陽が眩しかった。
青き島々を浮かべ、銀波が躍る瀬戸の海を、高速船は滑るように走っていく。
吹き渡る風が頬に心地よい。
一九七八年(昭和五十三年)七月二十四日午後一時、山本伸一たち一行は、移動時間を短縮するため、チャーターした高速船「キングロマンス」号で、岡山から香川県・庵治町の四国研修道場へ向かった。
彼の四国訪問は、この年二度目であった。
伸一は、峯子に言った。
「四国から大人材を育てるよ。学会の宝は人だもの。人が育ってこそ広宣流布は進む。
皆と会い、同じ志の勇者をつくるよ」
2 大道(2)
山本伸一たちの乗った高速船「キングロマンス」号は、午後二時過ぎに、四国研修道場前の桟橋に接岸された。
夏の太陽が、ギラギラと照りつけ、気温は三四度を超えていた。
「先生! ようこそ!」
酷暑のなか、香川の同志が、汗にまみれながらも、満面の笑みで迎えてくれた。
「暑いなか、本当にご苦労様です。記念に写真を撮りましょう」
到着するや、伸一のメンバーへの激励が始まった。
引き続き研修道場内を視察し、館内で、路上で、また、海岸で、会う人ごとに声をかけては、ねぎらいと励ましを重ねた。
居合わせた青年たちの思い出になればと、一緒に海に入り、泳ぎもした。
この日は、岡山から、研修会参加者が集って来ていた。
午後六時過ぎ、瀬戸の空が、真っ赤な夕焼けに染まり始めたころ、研修道場の庭で野外研修が始まった。
特設された舞台の後ろには、「歓迎 ようこそ四国研修道場へ!」の文字が躍っていた。
野外研修では、地元・香川の各部合唱団が、岡山の同志を歓迎しようと、新学会歌「友よ起て」「星は光りて」「人生の旅」を披露。
さらに、香川の婦人部有志の琴演奏や、徳島の友による「阿波踊り」のあと、新中国の歌「地涌の讃歌」を合唱。そして、新四国の歌「我等の天地」が発表されたのである。
歌声は、夕焼け空に広がっていく。皆、愛する郷土建設への熱き思いを託し、声を限りに歌った。
二度、三度と繰り返された。
伸一は、二番の「喜び勇んで 我等をば 包み護らん 鉄囲山」の箇所が歌われるたびに、心に深く誓うのであった。
「私は、鉄囲山となって、四国の同志を、地涌の仏子を守り抜く! 負けるな、四国の同志よ! 断じて勝つのだ!」
3 大道(3)
庵治の浜辺は黄昏を迎えていた。
歓喜と誓いの合唱が終わると、山本伸一は笑みをたたえながら、マイクに向かった。
「愛郷心みなぎる、意気盛んな皆さんの熱唱に、四国広布の新たな夜明けの歌を聴きました! 希望の光を見ました!」
この研修で彼は、広宣流布という大目的に生きる信仰の世界にこそ、最高の歓喜と人生の醍醐味があることを訴え、新しい出発への決意を促した。
研修が終わると、彼は、真っ先に参加者の輪のなかに飛び込み、握手を交わし、肩を抱きかかえ、励ましていった。同行の副会長や四国の方面幹部、県幹部も彼に続いた。
伸一の顔にも、体にも、汗が噴き出した。
思えば、半年前に四国を訪問した折、彼が寒風の中、行く先々で幹部に語り、行動をもって示したのは、「仏を敬うがごとく、会員の皆さんに尽くせ」ということであった。
会員奉仕こそ幹部の基本姿勢であると叫び抜き、四国の天地に幹部革命の烽火を上げたのだ。
仏法とは、慈悲の教えである。そして、それが、人間の振る舞いとなって体現されてこそ、現実に価値をもたらす。
日蓮大聖人は、「教主釈尊の出世の本懐は人の振舞にて候けるぞ」と仰せである。
人びとを敬い、幸せの大道へと導き、励ます振る舞いのなかに、仏法者の生き方があり、そこに仏道修行もあるのだ。
幹部の意識革命、人格革命がなされ、「慈悲」という生き方が確立されていけば、それは、全会員に波及し、励ましの人の輪は、地域、社会に幾重にも広がっていこう。
そして、現代にあって分断されつつあった人と人との絆は、復活していくにちがいない。
広宣流布とは、見方を変えれば、仏法の法理を各人が、自己自身の生き方、哲学として体現し、信頼の絆をもって人びとと結ばれていくことであるといってよい。
その輪を広げ、人間を尊び、守り合う、生命尊厳の時代、社会を築き上げていくことが、創価の同志の重要な使命となる。