Nichiren・Ikeda
Search & Study
1 若芽(1)
若芽たちよ!
未来を見すえ、無限の大空へ、
真っすぐに伸びゆく若芽たちよ!
そのみずみずしい生命には、
希望が満ちあふれ、正義の心が鼓動し、
向学の息吹が脈打つ。
創価の魂のバトンを受け継ぐ、
尊き宝の君たちよ!
ぼくの開いた平和の道、友情の道を、
さらに大きく広げ、
この地上から、貧困を、飢餓を、
差別を、戦争を、あらゆる悲惨を、
必ずや根絶してくれたまえ。
そのために、
強くあれ! 勇敢であれ! 聡明であれ!
自分を鍛え、挑戦し、貪欲に学ぶのだ。
君たちの成長を、
胸を躍らせながら、
ぼくは待っている。世界が待っている。
鳥たちは、歓びの歌を歌い、
花々は、風を友に、幸せのワルツを踊る。
王子、王女の、未来への旅立ちだ!
一九七八年(昭和五十三年)四月九日、東京は、午前中から気温が上がり、六月上旬を思わせる陽気であった。天候不順で遅れていた桜も、暖かな日差しを浴びて、一斉に満開になった。
東京・小平市にある西武国分寺線の鷹の台駅前は、午前九時ごろから、真新しい制服に身を包んだ小学生と親などで賑わっていた。男子は濃紺の詰め襟に半ズボン、女子はセーラー服に赤いスカーフ姿である。皆、服が少しだぶついているのは、成長を見越しての配慮であろう。子どもたちの、どの目にも希望が光り、どの顔にも笑みがこぼれていた。
この日、東京創価小学校の第一回入学式が、晴れやかに行われたのである。
2 若芽(2)
東京創価小学校は、創価中学・高校に隣接して建てられていた。春の陽光に照らされた、鉄筋コンクリート造り三階建ての白亜の校舎が、武蔵野の緑の中に、ひときわ輝きを放って見えた。
校舎三階のバルコニーには、「にゅうがくおめでとう さあ、きぼうのしゅっぱつ!」と書かれた、三十メートルほどの横幕が掲げられていた。
創価小学校の入学式は、午前十一時から、創価学園の講堂で挙行された。
児童たちが、幾分、緊張した顔で壇上を見つめるなか、開式が宣言された。
初めに校長の新木高志が、一年生百二十五人、二年生八十二人、三年生八十四人の入学許可を告げたあと、「明るい子」「思いやりのある子」「ねばり強い子」という低学年のモットーを紹介した。
このモットーは、創立者の山本伸一が、設立の準備にあたってきた教職員に請われ、決めたものであった。彼は、人間教育を行ううえで重視すべきは、精神の育成であると考え、心、生き方という内面に焦点を当てたモットーにしたのである。
「明るい子」、すなわち明朗快活な子どもとは、自分を卑下したりすることなく、広く大きな、素直な心で、何事にも前向きに取り組んでいける子どもである。
「思いやりのある子」とは、他者を大切にする心をもつ子どもである。いかに学業成績が優秀であっても、自分のことしか考えぬ人間になってしまえば、本人も、周囲の人も不幸である。思いやりの心を育んでいくことは、人格をつくるうえで、最も大切な要件となる。
「ねばり強い子」をめざすのは、忍耐なくしては、物事の成就も、人間としての大成もないからだ。子どもが人生を勝利していくために、身につけておかねばならない必須の力といってよい。
伸一は、未来に伸びゆく子どもたちの、健全な精神の土台をつくることこそが、児童教育の最大の眼目であると確信していたのだ。
3 若芽(3)
入学式は、「ちかいのことば」の発表となった。三年生の代表が壇上に上り、演台を前にして立つ校長に向かった。
場内は静まり返った。会場中の目が、心配そうに児童に注がれた。
「待ちに待ったぼくたちの入学式……」
元気な声が響いた。物おじすることなく、堂々としていた。
「今日からは創価小学校の子。学園のおにいさんやおねえさんに負けないよう、ぼくたちはがんばります。
まっ白いできたての校舎、すばらしい教室、ランチルーム、みんな、早くおいでとぼくたちを呼んでいるようです。
こんなりっぱな学校にかよえるのもお父さん、お母さんのおかげです。お父さん、お母さん、ありがとうございます」
保護者席で、目を潤ませる父母もいた。
幼いながらも、親への感謝を語る児童代表の言葉には、心の気高さが感じられた。
「恩を知る心以上に高貴なものはない」とは、哲人セネカの言葉である。
「ちかいのことば」は続いた。
「そして、だれよりも喜んでくださっている山本先生、本当にありがとうございました。
先生は、ぼくたちの未来のために、根っこになろうとおっしゃいました。
先生! ぼくたちは必ず未来の使者として、二十一世紀に思いっきりがんばります。
そのためにも、今日からは小学校のモットー、明るい子、思いやりのある子、ねばり強い子になることをちかいます」
講堂に大きな拍手が起こり、いつまでも鳴り止まなかった。
ここで学園の理事の一人が、創立者・山本伸一のメッセージを読み上げた。
このメッセージは、印刷して新入生全員に配られており、漢字には、振り仮名が振ってあった。
児童たちは、その声を聴きながら、印刷されたメッセージを、一文字一文字、目で追っていった。