Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第26巻 「法旗」 法旗

小説「新・人間革命」

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1  法旗(1)
 挑戦あるところに、前進がある。
 挑戦あるところに、希望がある。
 挑戦あるところに、歓喜がある。
 挑戦あるところに、幸福がある。
 挑戦あるところに、勝利がある。
 大宇宙の万物が、挑戦を続ける。
 花は、懸命に深雪を割いて新芽を出し、
 波は、体当たりを重ねて巌を削り、
 太陽は、日々、暁闇を破って躍り出る。
 人が見ようが、見まいが、
 己が使命を果たさんと、
 黙々と、忍耐強く、労作業を繰り返す。
 挑戦! 挑戦! 挑戦!
 それが、″生きる″ということなのだ。
 われらは、挑む!
 あの友、この友に幸福の道を教え、
 人びとの栄えと平和を築くために!
 宿命の嵐猛る大地に決然と立って、
 人間の真実の力を示し切るために!
 「私は、こんなにも幸せだ!」と
 衆生所遊楽の人生を生き抜くために!
 私は、歩む!
 今日の小さな一歩が、
 いつか、必ず大道になるから!
 私は、負けない!
 吹雪の暗夜も、
 明日は必ず、勝利の太陽が昇るから! 
 創価学会は、一九七八年(昭和五十三年)を「教学の年」第二年と定め、御書の研鑽と座談会の充実を活動の機軸にして、晴れやかなスタートを切った。
 元旦、山本伸一は、自宅で家族と共に勤行し、広宣流布の前進と世界の平和を、全会員の健康・長寿と一家の繁栄を、真剣に祈念した。彼の胸には、″今年もまた、命の限り、輝ける広宣流布の新しき道を開き抜こう″との、烈々たる決意が燃え盛っていた。強き一念という因が、大勝利という果を生むのだ。
2  法旗(2)
 自宅で勤行を終えた山本伸一は、妻の峯子が用意した筆を手にし、同志への励ましのために、次々と色紙に揮毫していった。
 伸一にも、峯子にも、元日だからといって休養する時間などなかった。″わが同志を守り、励まそう!″との一念が、彼らを間断なき行動へ、奉仕へと駆り立てていた。
 正午過ぎ、伸一は、学会本部での新年勤行会に出席するため、徒歩で自宅を出発した。
 坂を上り、聖教新聞社の前に来ると、何人もの学会員の姿があった。新年勤行会の参加者であろうか。
 「あっ、先生!」
 一人の婦人が、声をあげた。
 彼は、微笑みながら手を振って応えた。
 「皆さん、おめでとう! せっかくですから、一緒に記念の写真を撮りましょう」
 歓声があがり、周囲にいた人たちが集まり、友の輪は見る見る膨らんでいった。
 七十人ほどの記念撮影となった。
 彼は、皆に語った。
 「日本の経済を見ても、円高不況などと言われ、依然、企業の倒産や人員整理が相次ぎ、暗い材料ばかりです。だからこそ、仏法を語り抜かねばならない。だからこそ、皆さんがいるんです。
 御本尊を受持し、真剣に信心に励む皆さんは、どんなに大風が吹いても、絶対に消えることのない松明を持っているんです。その松明は、希望と勇気の光を放ちます。
 この信心の松明をますます燃え上がらせ、社会を照らし出していく使命が、皆さんにはあるんです。お友だちを励ましてあげてください。皆の心に希望の光を送ってください。勇気の火をともしてあげてください。
 人を励まし、幸せにしていくなかに、自身の幸福もあるんです。
 ″大変だな。苦しいな″と思ったら、″だからこそ、私が立つのだ!″″だからこそ、宿命転換するのだ!″と、自分に言い聞かせてください。合言葉は″だからこそ!″でいきましょう!」
3  法旗(3)
 元日の午後一時半から、学会本部の師弟会館で行われた新年勤行会に出席した山本伸一は、あいさつのなかで、法華経寿量品の「毎自作是念」(毎に自ら是の念を作す)について言及した。
 「『毎自作是念』とは、一言すれば、常に心の奥底にある一念といえます。
 仏の『毎自作是念』は一切衆生の成仏にあります。仏は、すべての人びとを幸福にすることを、常に念じ、考えておられる。
 私どもも、奥底の一念に、常に何があるのか、何を思い、願い、祈っているのかが大事になるんです。そこに、自分の境涯が如実に現れます。御本仏・日蓮大聖人の久遠の弟子である私たちは、大聖人の大願である広宣流布を、全民衆の幸せを、わが一念、わが使命と定めようではありませんか。そして、日々、久遠の誓いに立ち返り、広布を願い、祈り、行動する一人ひとりであってください。
 私も、『毎日が元日である』と決めて、清新の息吹で、本年もまた、わが法友のため、世界の平和のために、力の限り奔走してまいる決意であります!」
 伸一の話は、三、四分であったが、気迫に満ちあふれた指導であった。
 この「教学の年」第二年は、元日付から連載された、伸一の「観心本尊抄」講義で、大教学運動の幕を開けた。
 世界に、仏法の生命尊厳と慈悲の哲理を発信し、人類の平和と繁栄を創造する、新しい人間主義の潮流を創らねばならないと、伸一は、強く決意していたのである。
 また彼は、今年は、全国の各方面を駆け巡り、新しい同志と会い、新しい発心の絆を結ぼうと、固く心に誓っていた。
 伸一は、新年の出発にあたり、「命限り有り惜む可からず遂に願う可きは仏国也」との御文を、深く生命に刻んでいた。
 末法広宣流布の旅路が、順風満帆の日々であるはずがないからだ。それは、怒濤の海路である。風雪の険路である。ゆえに、不惜身命の覚悟と実践なくして勝利はない。

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