Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

第24巻 「人間教育」 人間教育

小説「新・人間革命」

前後
1  人間教育(1)
 創価学会は、どこにあるのか――。
 遠く彼方にあるのではない。自分が暮らし、日々戦い、励ましの歩みを運ぶ、わが地域、わが地区(以前の大ブロック)、わがブロックにこそ、絢爛たる創価の大城があるのだ。
 ゆえに、そこに、「わが組織を見よ。これが創価学会だ!」と胸を張れる、歓喜と麗しき人間共和の実像をつくらねばならない。
 わが組織に――
 功徳の体験の花は咲き薫っているか!
 信心の歓喜と確信はあふれているか!
 宿命の嵐に敢然と挑み立つ、勇気はみなぎっているか!
 仏道修行への挑戦と、切磋琢磨はあるか!
 粘り強い励ましの対話はあるか!
 信頼の絆と団結はあるか!
 皆に創価の師弟の誇りは脈打っているか!
 御聖訓には、「法華経を持ち奉る処を当詣道場と云うなりここを去つてかしこに行くには非ざるなり」と仰せである。
 自分が今いる活動の舞台が、「当詣道場」、すなわち、一生成仏のための仏道修行の場となるのだ。したがって、どこか別の世界に、本当の「創価学会」があるなどと考えるのは誤りである。
 ″広宣流布の建設とは、まず、自分のいる組織を、盤石に築き上げていくことだ。それには、自身が、建設の勇者となることだ。誰かではない。自分が立つのだ。
 一人立つ――そこから、すべては始まる。それが、創価の永遠の精神だ。皆が山本伸一の分身だ。皆が会長だ!″
 これが、伸一の、生命の叫びであった。
 一九七七年(昭和五十二年)「教学の年」は、大ブロックの強化をめざし、活動方針の一つに、「座談会運動で魅力ある大ブロックの建設」を掲げてスタートした。
 さらに、毎月、「大ブロック建設週間」を設け、座談会を中心に、全幹部が大ブロックに入り、協議会や家庭指導に力を入れていくことになったのである。
2  人間教育(2)
 一九七七年(昭和五十二年)一月上旬、学会本部などの各会場名が正式に決まり、発表された。本部三階広間の師弟会館をはじめ、創価文化会館の五階大広間は広宣会館、三、四階のホールは金舞会館、地下の集会室は地涌会館、聖教新聞社六階の大広間は言論会館と命名されたのである。
 一月十八日、その師弟会館、広宣会館を会場に、最高幹部が担当し、大ブロック幹部の研修の意義を込めた勤行会が開始されたのだ。
 二十九日に開催された、東京の江東、墨田、荒川、中央の四区合同の婦人部大ブロック担当員(現在の地区婦人部長)勤行会には、会長の山本伸一が出席した。大ブロック幹部の成長にこそ、広宣流布の一切の勝利がかかっているからだ。
 席上、伸一は、一月半ばに訪問した和歌山県の、一婦人の体験を紹介した。
 ――その婦人と夫は、一九五四年(昭和二十九年)に、和歌山市内で創価学会の話を聞かされる。しかし、婦人は、頭から仏法を否定し、学会を蔑むようなことを言い続けた。
 学会員は、「仏法は、幸福になるための法則なんです。それを真っ向から否定していれば、いつか行き詰まってしまいますよ」と、諄々と訴えたが、聞く耳をもたなかった。
 ほどなく、夫の事業が失敗し、夜逃げ同然で、和歌山県の新宮市に移り住む。再起しようと、夫婦で懸命に働くが、ますます生活は苦しくなっていった。
 多額の借金。そのうえ婦人は、胸膜炎や心臓弁膜症などの病にもさいなまれた。何もかも行き詰まった。心は、深い闇に閉ざされ、なんの希望も見いだせず、遂に生きることに、疲れ果ててしまった。
 信心の話を聞いてから、三年がたとうとしていた。彼女は、二人の幼子と一緒に、死のうと思った。そして、死と向き合った時、初めて、仏法の話を思い起こした。
 「祈りとして叶わざるはなしの御本尊よ。真剣に信心に励めば、誰でも、必ず幸せになれるのよ」との言葉が、胸に蘇った。
3  人間教育(3)
 婦人は、夫に、「信心してみようと思うの」と話した。すると、夫は言った。
 「俺は、三年前、学会の話を聞いた時に、本当は、信心をしたかったんだ。しかし、おまえが、あんなに反対したから……」
 彼女は、すぐに、仏法の話をしてくれた和歌山市の学会員に、速達で手紙を出した。
 「あなたの言われていた信心をやりたいと思います。すぐに来てください……」
 婦人の一家は、一九五七年(昭和三十二年)六月、晴れて入会する。
 以来二十年、事業も軌道に乗り、借金も返済した。はつらつとして学会活動に励み、婦人は、県の幹部として活躍。夫妻で幸せを満喫している。彼女が一緒に死のうと思った長男は、創価大学の四年生となり、さらに、海外の大学院に進もうと、勉学に励んでいるというのだ――。
 山本伸一は、大ブロック担当員勤行会で、この婦人の体験を紹介したあと、訴えた。
 「御本尊の力は、一朝一夕には、わからないかもしれない。しかし、十年、二十年と、真剣に信心に励んでいくならば、結果は、厳然と表れます。
 私たちの現実の日々は、悩みだらけでしょう。学会活動の場でも、″わからずや″ばかりで、もうやっていられないと思うこともあるかもしれない。また、皆さんのなかには、子どもさんの問題で悩んでいたり、ご主人と喧嘩ばかりしている方もいるでしょう。会合に来る交通費を工面するのも大変な方や、病苦と闘っている方もいるでしょう。
 しかし、戸田先生は、大確信をもって、よく、こう言われておりました。
 『朝晩の勤行を励行し、懸命に唱題し、折伏を行っていくならば、人間革命できないわけがない。幸福にならないわけがない。これだけは断言しておきます』
 大ブロック担当員の皆さんは、必ず幸せになってください。また、大ブロックの人たちを、一人も残らず、幸せにしていってください。皆さんは、その幸福責任者なんです」

1
1