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成績を上げる法 自分を信じよ! あきらめるな

「青春対話」(池田大作全集第64巻)

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1  ―― 今回のテーマは、ずばり「成績を上げる法」。いちばん身近で、いちばん大事な課題です。そこで、教育部の代表の方に加わっていただきました。
 皆さん、よろしくお願いします。
 池田 どうやれば成績が上がるのか――勉強が苦しくてしかたがないという高校生のために、″秘策″は何かということですね。「成績に自信あり」という諸君は、今回は読まなくても結構。
 まず数学ですが、数学は、大人になって役に立ちますか?
 数学科教諭 これは「数学の教師には最高に答えにくい質問」です。
 池田 それは、どうも。しかし、「こんなこと勉強して何になるんだ」と思っている高校生は多いんじゃないですか?
 数学科教諭 たしかに、数学の公式を知らなくて、人生が不幸になった話など、聞いたことはありません。
 しかし、数学は「なぜ?」「どうして?」と問い続け、スパンと答えが出る。「なるほど!」とわかる。私は、この喜びが大事なんだと思っています。
 授業でも「自分のなかから『なるほど』『なるほど』と″なるほどコール″が起こってくるのがいいんだよ」と、よく話しているんです。「試行錯誤を繰り返しながら、考えていく力」をつけるには、数学は最適のトレーニングです。
 そうやって「鍛えた頭脳」は、何をするにも大きな財産になります。ですから、数学そのものに価値を感じなくても、数学を媒介にして「自分自身をつくるんだよ」――生徒には、こう訴えています。
 池田 なるほど。私の恩師の戸田先生も「数学の大家」でした。受験生のために書いた数学の参考書(『推理式指導算術』)は、当時の大ベストセラーです。
 そんな先生ですから、豪放な反面、実に緻密な頭脳をしておられた。宇宙大のことを論じているかと思うと、針の先で突つくような細かいところまで鋭く見ておられた。魅力ある先生でした。
 私は、勉強の目的は「魅力のある人間」になることだと思う。「光っている人間」になることです。だから本当は、成績が少々、良かろうが悪かろうが、大したことではない。はじめから、こんなことを言うと、先生方に叱られてしまうかもしれないけれども。
 「サイン、コサイン」がわからなくたって、「因数分解」がわからなくたって、社会人になれば、大ていは何も困らないんです。また、わからないからといって、人間の価値には、まったく何の関係もない。
 たとえば、美容院に勤めて、いつも、にこにこと笑顔で気持ちよく、皆を美しくするために頑張っている人もいる。いつも愛想よくすることだって才能です。立派な才能だ。
 それは数学の才能と、どっちが上とか下とかということはない。
 だから数学ができなくても、堂々と胸を張ってればいいんです、本当は。できないからといって「いじけた人間」になることのほうが大きな問題です。
 何だか「成績を上げる」話と、反対の方向に話が向かっているようだけれども。小さなことで「自分はダメだ」と思いこむことがいちばん、ばかばかしいことなんだということです。
 数学科教諭 本当に、その通りだと思います。どうしても教師は、成績中心に生徒のすべてを判断しがちです。
 そういう「冷たさ」に生徒がどれくらい傷つくか、わかっていない場合が多いんです。傷つき、閉じてしまった心に、どんなに勉強しろと言っても、なかなかできるものではありません。
2  魅力ある人間になれ、そのために学ぶ習慣を
 池田 成績が優秀で「いやな人間」になるよりは、成績が中くらいでもいいから「魅力ある人間」になってもらいたい。
 「魅力ある人間」というのは、″自分は自分だ″と堂々と胸を張っている人間です。自分と違う人の長所を、素直に尊敬し、愛せる人間です。
 嫉妬なんかしないで。正しいことは正しい、悪いことは悪いと、はっきり主張し、行動できる人間です。いじわるじゃなくて、人の心の痛みがわかる人間です。
 そして、自分の知らないこと、新しいことに、子どものような好奇心をもって探究していく人間です。ひとたび「やろう」と決めたことは、とことんやり抜く人間です。
 「どうせ自分なんか」と卑下したり、「こんなにやったのに」と愚痴を言ったりしないで、精いっぱい努力した後は、からっと、大らかに笑っていられる人間です。
 そういう「心に青空が広がっている」ような大きな人間になってもらいたい。そのための「勉強」であり「学校」なんです。
 それなのに、「勉強」のために自信を失ったり、こせこせした人間になるんなら「逆さま」です。何の意味もない。だから、「今の自分」を出発点にして、自分らしく、力のかぎり、やるべきことに挑戦を始めればいいんです。
 だれでも皆、必ず使命がある。自分にしかできない使命がある。君の力を必要とする人が必ず、どこかにいる。自分にしかできないこと、自分が本当にやりたいと思うことが、きっとある。
 それを見つけるためには、まず目の前の「現実」から逃げないことだ。逃げずに頑張る「くせ」をつけることだ。そうやって、もがきながら、自分らしく、一ミリでも二ミリでもいいから、「前へ」進むことだ。
 人と比べる必要なんかない。人と比べちゃいけない。急に勉強を始めれば、からかわれるかもしれない。照れくさいかもしれない。小さなことです。
3  「もう手遅れだ」は、ない
 池田 だれが何を言っても気にしてはいけない。笑う者には笑わしておけばいい。一生懸命やっている人間を笑う人間なんて、くだらない人間だ。くだらない人間に、いくら笑われたって平気なはずだ。
 「逃げないで、ぶつかってみる」――結果はどうあれ、その「勢い」が自分を磨き、「魅力ある人間」に鍛えてくれるんです。
 「もう手遅れだ」なんてことは絶対にない。それなのに、小・中・高と進む間に、「自分はダメだ」と思いこむ人が多い。その劣等感が、自分の頭脳にブレーキをかけていることが多いように思うんですが、どうでしょうか。
 数学科教諭 その通りだと思います。自分で自分をあきらめてはいけません。
 私は、よく「ゾウの杭」の話をするんです。サーカス小屋で一番、力の強い動物はゾウです。だけど檻に入っていない。一本の杭があるだけです。
 なぜ逃げないのか?それは、ゾウが赤ちゃんの時、杭につながれた。
 赤ちゃんゾウは、お母さんが恋しいですから、杭を引き抜こうと、何千回、何万回も努力します。
 でも、杭は、がっちり打ち込んであるから、ビクともしない。抜こうとすればするほど、鎖が足に食い込む。血がにじむ。
 やがてゾウは″この杭がある限り、逃げ出せない″と思い込み、努力しなくなるというのです。だから大人になっても逃げない。これが「あきらめ」の本質です。

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