Nichiren・Ikeda
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お隣・中国とどう付き合うか
正しき歴史観をもて
「青春対話」(池田大作全集第64巻)
前後
1 ―― 今年(一九九九年)は池田先生が、初めて中国を訪問されてから、ちょうど二十五年です。ぜひ、将来のために、「お隣・中国と、どう付き合うか?」をテーマに、うかがいたいのですが。
池田 わかりました。年をとった先輩に話しても、どうしても、すぐに忘れてしまう。だが、諸君は若い。何でも吸収できる。今は、全部がわからなくてもいい。一度、入っていれば思い出すものだ。これをきっかけに、将来、自分で思索を深めていってくれればいい。
なんでまた、中国を取り上げようと思ったの?
2 「自分の国を悪く言うのは悪い」?
―― じつは、どうもここ数年、かつて戦争を起こした「国家主義」が復活してきている気がするんです。大手をふって……。
書店でも、そういう本が、よく目につきます。「日本が戦争したのを悪い悪いというが、自分の国を悪く言うなんて、自虐(自分をいじめる)史観だ」などという論調です。侵略とか都合の悪い事実には頬かむりして、日本は「こんないいこともしたんだ」という。
冷静な人なら、ごまかしはすぐにわかるんですが、ぼーっとしていると、何となく、その気にさせられる。そういう本が若い人に、驚くほど浸透しているんです。
池田 本当に危険だ。悪い行動を反省するのを「自虐」と呼ぶなら、戦争を肯定するそういう人たちの歴史観は「他虐(他人をいじめる)史観」とでもなるのだろうか。まったく論理になっていない。しかし、それだからこそ危険なのです。
ヒトラーの話だって、論理的には、めちゃくちゃだった。しかし、あれだけの人々を引きずり、大悲劇をもたらした。
そもそも国家主義というのは、人の理性に訴えるよりも、どろどろした情念に訴えるものです。だまされないよう、しっかりした歴史観が大事です。
中国に日本が何をしたのか、はっきり「事実」を認識しなければ、日本という国の「現実」も見えてこないでしょう。
―― 中国は「お隣さん」です。私は九州ですが、九州から中国へ修学旅行で行く学校も多いので、すごく身近です。
日中の歴史を見つめることは、日本という国は「どう歩んできたか」「これから、どう進んでいくべきか」を知る″鏡″になると思います。
池田 そうだね。賛成です。「日本と中国は、絶対に友好を結ばなければいけない」――これは私の小学生のころからの信念です。
3 アジア蔑視の心
―― 中国と聞くと、『三国志』『水滸伝』といった歴史物語が浮かびます。また「世界一の人口」「漢文や古文で出てくる中国の地方に行きたい」「宇宙から見える唯一の人工の建造物・万里の長城をつくったのは、すごい」という声もあがります。
その一方、こんな声もあります。
「中学の時、『外国人の転入生が来る』と言われて、みんなすごく喜んでいたけど、中国人と聞くと、『なんだー』とか言ったりしていた。その時は何とも思ってなかったけど、今になって、『これは差別だ』と思った」
「自分の友達は、中国人と間違えられた時に、あわてて『いえ、私は違います。日本人です』と答えた。友人は『自分は中国に対して、どこか偏見があったのかと感じた』と話してくれました」
日本人のアジア蔑視、中国蔑視は、残念なことに、今もあると思います。
池田 本当に愚かです。欧米人相手だと畏縮し、アジア人相手だと優越感をもつ。本当に卑屈な国民性です。
ある人が言っていた。「日本人は、国家と自分を切り離して考えられない。国の威勢がいい時には、自分まで偉くなったように思う。国に元気がなくなると、自分まで自信をなくしてしまう」
確固たる「個人」が確立されていないからでしょう。だから、国をあげて「欧米の文化を取り入れ、欧米に追いつき、アジアを支配する」という目標を掲げた時、だれもが「右へならえ」してしまった。
もちろん、そういう教育を徹底したことも言うまでもない。中国・韓国から文化を学んだ大恩を教えず、″劣等民族″のように教えた。アジアの人々を「日本人よりも劣る民族」のように言わないと、「日本がアジアを支配する」という大義名分も立たないからです。とんでもないことだ。
―― 教育が、政府の都合でゆがめられたんですね。皆、「国家による洗脳」に、のっけられてしまった……。