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日蓮大聖人・池田大作

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芸術との語らい 「心」を耕せ! 「皆を喜ばせたい」が芸術の心

「青春対話」(池田大作全集第64巻)

前後
1  ―― きょうは「芸術との語らい」がテーマです。ただ、「芸術」というと、どうしても堅苦しい感じがしてしまうのですが……。
 池田 そうかもしれない。
 でも、鳥の歌を堅苦しいとは、だれも思わないでしょう。野原一面の花たちを堅苦しいとは、だれも思わないでしょう。月の光に爛漫の桜が浮かび上がっていれば、だれもが、はっとするでしょう。見とれてしまうでしょう。
 青空を見て、「ああすばらしいな」と思う。川のせせらぎに聞きほれて、耳が洗われたような気持ちになる。その心が、「美」を愛する心であり、芸術・文化の心なのです。
2  「人をくつろがせ、ほっとさせる」
 池田 決して特別のことではないし、本来、一流の芸術も、自然と同じように、「人をくつろがせたり」「生命力を与えてくれる」ものなのです。
 また、女性がきれいになろうとすることも、「美」の追求であり、芸術・文化に通ずる。きれいに掃除をしようとすることも、「美」の創造であり、芸術・文化に通ずる。部屋に、一輪、花を飾るだけで、全体が見違えるようになる場合がある。和やかになってくる。それが「美」の力です。
 芸術の世界は、「ほっとする」ものであって、身がまえたり、窮屈になったりするものではないのです。疲れている心を励ましたり、きゅっと凝り固まった心を、ときほぐし、解放させてくれるのが、芸術であり、文化なのです。
 ―― それを堅苦しく感じてしまうのは、芸術が「勉強」の対象になってしまうからかもしれませんね。
3  考えこむ前に一心に聴く・見る
 池田 芸術は、まず楽しめばいいんです。初めから頭で「理解」しようとすると、かえって、わからなくなってしまう。鳥の歌を「理解」しようという人はいないでしょう。花の野原を「理解」しようという人はいないでしょう。もちろん、優れた作品の中には、味わうのに集中と努力が必要なものもある。
 しかし基本は、音楽なら、まず無心に「聴く」ことです。絵画なら、一心にまず「見る」ことです。見る前に、考えてしまっている人が多いのです。
 たとえば、美術館に行くことも、日本では特別のことのようになっている。ヨーロッパなどでは、ごく小さい時から美術館に行く。当たり前のことであり、特別なことではないのです。それは、一つには欧米の美術館が民主主義の結実だったからかもしれない。
 昔、一部の王侯貴族とか大富豪しか美術品を集められなかったし、見られなかった。それを「私たちにも見せろ!」と言って生まれたのが美術館です。簡単に言うと、そういうことです。「美」を皆で楽しみたいという民衆の欲求の高まりで生まれたものです。これに対して、日本の美術館は、明治からの近代化に伴って、政府が「わが国にもヨーロッパのような美術館がないと恥ずかしい」と思って、つくったものです。「官」主導だったから、どうしても、「お前たちにも見せてやろう」という発想になってしまう。
 ―― 「ありがたく思え」と。それでは本当に窮屈で、しきいが高くなりますね。
 池田 今は大分、変わったと思うが、伝統というものは根強いもので、まだまだ、そういう発想が、芸術・文化の世界全体に残っていると思う。
 本当は、文化は「人を楽にさせる」もので、いばる心は芸術とは反対なのだが、それがわからない人が多い。

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