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日蓮大聖人・池田大作

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富木殿御書  (1/2) 賢人は安きに居て危きを歎き
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富木殿御書

                    建治元年 五十四歳御作

                    与 富木常忍

妙法蓮華経の第二に云く「若し人信ぜずして此の経を毀謗し経を読誦し書持すること有らん者を見て軽賤憎嫉して結恨を懐かん其人命終して阿鼻獄に入らん乃至是の如く展転して無数劫に至らん」第七に云く「千劫阿鼻獄に於てす」第三に云く「三千塵点」第六に云く「五百塵点劫」等云云、涅槃経に云く「悪象の為に殺されては三悪に至らず悪友の為に殺されては必ず三悪に至る」等云云、賢慧菩薩の法性論に云く「愚にして正法を信ぜず邪見及び憍慢なるは過去の謗法の障りなり不了義に執着して供養恭敬に著し唯邪法を見て善知識に遠離して謗法者の小乗の法に楽著する是の如き等の衆生に親近して大乗を信ぜず故に諸仏の法を謗ず、智者は怨家・蛇・火毒・因陀羅・霹靂・刀杖諸の悪獣・虎狼・師子等を畏るべからず、彼は但能く命を断じて人をして畏るべき阿鼻獄に入らしむること能わず、畏るべきは深法を謗ずると及び謗法の知識となり決定して人をして畏るべき阿鼻獄に入らしむ、悪知識に近づきて悪心にして仏の血を出だし及び父母を殺害し諸の聖人の命を断じ和合僧を破壊し及び諸の善根を断ずると雖も念を正法に繋ぐるを以て能く彼の処を解脱せん、若し復余人有つて甚深の法を誹謗せば彼の人無量劫にも解脱を得べからず、若し人衆生をして是の如きの法を覚信せしめば彼は是我が父母亦是れ善知識なり、彼の人は是智者なり如来の滅後に邪見顛倒を廻して正道に入らしむるを以ての故に三宝清浄の信・菩提功徳の業なり」等云云、竜樹菩薩の菩提資糧論に云く「五無間の業を説きたもう乃至若し未解の深法に於て執着を起せるは○彼の前の五無間等の罪聚に之を比するに百分にしても及ばず」云云。

夫れ賢人は安きに居て危きを歎き佞人は危きに居て安きを歎く大火は小水を畏怖し大樹は小鳥に値いて枝を折


らる智人は恐怖すべし大乗を謗ずる故に、天親菩薩は舌を切らんと云い馬鳴菩薩は頭を刎ねんと願い吉蔵大師は身を肉橋と為し玄奘三蔵は此れを霊地に占い不空三蔵は疑いを天竺に決し伝教大師は此れを異域に求む皆上に挙ぐる所は経論を守護する故か。

今日本国の八宗並びに浄土・禅宗等の四衆上主上・上皇より下臣下万民に至るまで皆一人も無く弘法・慈覚・智証の三大師の末孫・檀越なり、円仁・慈覚大師云く「故に彼と異り」円珍・智証大師云く「華厳・法華を大日経に望むれば戯論と為す」空海弘法大師云く「後に望むれば戯論と為す」等と云云、此の三大師の意は法華経は已・今・当の諸経の中の第一なり然りと雖も大日経に相対すれば戯論の法なり等云云、此の義心有らん人信を取る可きや不や。今日本国の諸人・悪象・悪馬・悪牛・悪狗・毒蛇・悪刺・懸岸・険崖・暴水・悪人・悪国・悪城・悪舎・悪妻・悪子・悪所従等よりも此に超過し以て恐怖すべきこと百千万億倍なれば持戒・邪見の高僧等なり、問うて云く上に挙ぐる所の三大師を謗法と疑うか叡山第二の円澄寂光大師・別当光定大師・安慧大楽大師・慧亮和尚・安然和上・浄観僧都・檀那僧正・慧心先徳・此等の数百人、弘法の御弟子実慧・真済・真雅等の数百人並びに八宗・十宗等の大師先徳・日と日と・月と月と・星と星と・並びに出でたるが如し、既に四百余年を経歴するに此等の人人一人として此の義を疑わず汝何なる智を以て之を難ずるや云云。

此等の意を以て之を案ずるに我が門家は夜は眠りを断ち昼は暇を止めて之を案ぜよ一生空しく過して万歳悔ゆること勿れ、恐恐謹言。

  八月二十三日                    日蓮花押

   富木殿

鵞目一結給び候畢んぬ、志有らん諸人は一処に聚集して御聴聞有るべきか。


御衣並単衣御書

                     建治元年 五十四歳御作

御衣の布並びに御単衣給び候い畢んぬ鮮白比丘尼と申せし人は生れさせ給いて御衣をたてまつりたりけり、生長するほどに次第にこの衣大になりけり、後に尼とならせ給いければ法衣となりにけり、ついに法華経の座にして記莂をさづかる一切衆生喜見如来これなり、又法華経を説く人は柔和忍辱衣と申して必ず衣あるべし、物たねと申すもの一なれども植えぬれば多くとなり竜は小水を多雨となし人は小火を大火となす、衣かたびらは一なれども法華経にまいらせ給いぬれば法華経の文字は六万九千三百八十四字・一字は一仏なり、此の仏は再生敗種を心符とし顕本遠寿を其の寿とし常住仏性を咽喉とし一乗妙行を眼目とせる仏なり、応化非真仏と申して三十二相八十種好の仏よりも法華経の文字こそ真の仏にてはわたらせ給いて仏在世に仏を信ぜし人は仏にならざる人もあり、仏の滅後に法華経を信ずる人は無一不成仏如来の金言なり、この衣をつくりてかたびらをきそえて法華経をよみて候わば日蓮は無戒の比丘なり法華経は正直の金言なり、毒蛇の珠をはき伊蘭の栴檀をいだすがごとし、恐恐謹言。

  九月二十八日                    日蓮花押

   御返事