Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

頼基陳状  (4/10) 悪法を以て人を地獄にをとさん邪師をみながら…
1156

此の御房は争か人の心をば知り給うべき某こそ当時日本国に聞え給う日蓮聖人の弟子として候へ、某が師匠の聖人は末代の僧にて御坐候へども当世の大名僧の如く望んで請用もせず人をも謟はず聊か異なる悪名もたたず・只此の国に真言・禅宗・浄土宗等の悪法・並に謗法の諸僧満ち満ちて上一人をはじめ奉りて下万民に至るまで御帰依ある故に法華経・教主釈尊の大怨敵と成りて現世には天神・地祇にすてられ他国のせめにあひ、後生には阿鼻大城に堕ち給うべき由・経文にまかせて立て給いし程に此の事申さば大なるあだあるべし申さずんば仏のせめのがれがたし、いはゆる涅槃経に「若し善比丘あつて法を壊る者を見て置いて呵責し駈遣し挙処せずんば当に知るべし是の人は仏法の中の怨なり」等と云云、世に恐れて申さずんば我が身悪道に堕つべきと御覧じて身命をすてて去る建長年中より今年建治三年に至るまで二十余年が間・あえて・をこたる事なし、然れば私の難は数を知らず国王の勘気は両度に及びき、三位も文永八年九月十二日の勘気の時は供奉の一人にて有りしかば同罪に行はれて頸を・はねらるべきにてありしは身命を惜むものにて候かと申されしかば。

竜象房口を閉て色を変え候しかば此の御房申されしは是程の御智慧にては人の不審をはらすべき由の仰せ無用に候けり・苦岸比丘・勝意比丘等は我れ正法を知りて人をたすくべき由存ぜられて候しかども我が身も弟子・檀那等も無間地獄に堕ち候き、御法門の分斉にてそこばくの人を救はむと説き給うが如くならば師檀共に無間地獄にや堕ち給はんずらむ今日より後は此くの如き御説法は御はからひあるべし、加様には申すまじく候へども悪法を以て人を地獄にをとさん邪師をみながら責め顕はさずば返つて仏法の中の怨なるべしと仏の御いましめ・のがれがたき上聴聞の上下皆悪道にをち給はん事不便に覚え候へば此くの如く申し候なり、智者と申すは国のあやうきを・いさめ人の邪見を申しとどむるこそ智者にては候なれ、是はいかなるひが事ありとも世の恐しければ・いさめじと申されむ上は力及ばず、某は文殊の智慧も富楼那の弁説も詮候はずとて立たれ候しかば、諸人歓喜をなし


掌を合せ今暫く御法門候へかしと留め申されしかども・やがて帰り給い了んぬ、此の外は別の子細候はず・且つは御推察あるべし・法華経を信じ参らせて仏道を願ひ候はむ者の争か法門の時・悪行を企て悪口を宗とし候べき、しかしながら御ぎやうさく有る可く候・其上日蓮聖人の弟子と・なのりぬる上罷り帰りても御前に参りて法門問答の様かたり申し候き、又た其の辺に頼基しらぬもの候はず只頼基をそねみ候人のつくり事にて候にや早早召し合せられん時其の隠れ有る可らず候。

又仰せ下さるる状に云く極楽寺の長老は世尊の出世と仰ぎ奉ると此の条難かむの次第に覚え候、其の故は日蓮聖人は御経にとかれてましますが如くば久成如来の御使・上行菩薩の垂迹・法華本門の行者・五五百歳の大導師にて御座候聖人を頸をはねらるべき由の申し状を書きて殺罪に申し行はれ候しが、いかが候けむ死罪を止て佐渡の島まで遠流せられ候しは良観上人の所行に候はずや・其の訴状は別紙に之れ有り、抑生草をだに伐るべからずと六斎日夜説法に給われながら法華正法を弘むる僧を断罪に行わる可き旨申し立てらるるは自語相違に候はずや如何・此僧豈天魔の入れる僧に候はずや、但し此の事の起は良観房・常の説法に云く日本国の一切衆生を皆持斎になして八斎戒を持たせて国中の殺生・天下の酒を止めむとする処に日蓮房が謗法に障えられて此の願叶い難き由歎き給い候間・日蓮聖人此の由を聞き給いて・いかがして彼が誑惑の大慢心を・たをして無間地獄の大苦をたすけむと仰せありしかば、頼基等は此の仰せ法華経の御方人大慈悲の仰せにては候へども当時日本国・別して武家領食の世きらざる人にてをはしますを・たやすく仰せある事いかがと弟子共・同口に恐れ申し候し程に、去る文永八年太歳辛未六月十八日大旱魃の時・彼の御房祈雨の法を行いて万民をたすけんと申し付け候由・日蓮聖人聞き給いて此体は小事なれども此の次でに日蓮が法験を万人に知らせばやと仰せありて、良観房の所へつかはすに云く七日の内にふらし給はば日蓮が念仏無間と申す法門すてて良観上人の弟子と成りて二百五十戒持つべし、雨ふらぬほどな


らば彼の御房の持戒げなるが大誑惑なるは顕然なるべし、上代も祈雨に付て勝負を決したる例これ多し、所謂護命と伝教大師と・守敏と弘法なり、仍て良観房の所へ周防房・入沢の入道と申す念仏者を遣わす御房と入道は良観が弟子又念仏者なりいまに日蓮が法門を用うる事なし是を以て勝負とせむ、七日の内に雨降るならば本の八斎戒・念仏を以て往生すべしと思うべし、又雨らずば一向に法華経になるべしと・いはれしかば是等悦びて極楽寺の良観房に此の由を申し候けり、良観房悦びないて七日の内に雨ふらすべき由にて弟子・百二十余人・頭より煙を出し声を天にひびかし・或は念仏・或は請雨経・或は法華経・或は八斎戒を説きて種種に祈請す、四五日まで雨の気無ければたましゐを失いて多宝寺の弟子等・数百人呼び集めて力を尽し祈りたるに・七日の内に露ばかりも雨降らず其の時日蓮聖人使を遣す事・三度に及ぶ、いかに泉式部と云いし婬女・能因法師と申せし破戒の僧・狂言綺語の三十一字を以て忽にふらせし雨を持戒・持律の良観房は法華真言の義理を極め慈悲第一と聞へ給う上人の数百人の衆徒を率いて七日の間にいかにふらし給はぬやらむ、是を以て思ひ給へ一丈の堀を越えざる者二丈三丈の堀を越えてんややすき雨をだに・ふらし給はず況やかたき往生成仏をや、然れば今よりは日蓮・怨み給う邪見をば是を以て翻えし給へ後生をそろしく・をぼし給はば約束のままに・いそぎ来り給へ、雨ふらす法と仏になる道をしへ奉らむ七日の内に雨こそふらし給はざらめ、旱魃弥興盛に八風ますます吹き重りて民のなげき弥弥深し、すみやかに其のいのりやめ給へと第七日の申の時・使者ありのままに申す処に・良観房は涙を流す弟子檀那同じく声をおしまず口惜しがる日蓮御勘気を蒙る時・此の事御尋ね有りしかば有りのままに申し給いき、然れば良観房・身の上の恥を思はば跡をくらまして山林にも・まじはり・約束のままに日蓮が弟子ともなりたらば道心の少にてもあるべきに・さはなくして無尽の讒言を構えて殺罪に申し行はむとせしは貴き僧かと日蓮聖人かたり給いき・又頼基も見聞き候き、他事に於ては・かけはくも主君の御事畏れ入り候へども此の事はいかに思い候とも・いかでかと思は