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日蓮大聖人・池田大作

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大白牛車御消息 
1584

日蓮は所らうのゆへに人人の御文の御返事も申さず候いつるが・この事は・あまりになげかしく候へば・ふでをとりて候ぞ、これも・よも・ひさしくも・このよに候はじ、一定五郎殿にいきあいぬと・をぼへ候、母よりさきに・けさんし候わば母のなげき申しつたへ候はん、事事又又申すべし、恐恐謹言。

  十二月八日                     日蓮花押

   上野殿母御前御返事

大白牛車御消息

抑法華経の大白牛車と申すは我も人も法華経の行者の乗るべき車にて候なり、彼の車をば法華経の譬喩品と申すに懇に説かせ給いて候、但し彼の御経は羅什・存略の故に委しくは説き給はず、天竺の梵品には車の荘り物・其の外・聞信戒定進捨慚の七宝まで委しく説き給ひて候を日蓮あらあら披見に及び候、先ず此の車と申すは縦広五百由旬の車にして金の輪を入れ・銀の棟をあげ・金の繩を以て八方へつり繩をつけ・三十七重のきだはしをば銀を以てみがきたて・八万四千の宝の鈴を車の四面に懸けられたり、三百六十ながれの・くれなひの錦の旛を玉のさほにかけながし、四万二千の欄干には四天王の番をつけ、又車の内には六万九千三百八十余体の仏・菩薩・宝蓮華に坐し給へり、帝釈は諸の眷属を引きつれ給ひて千二百の音楽を奏し、梵王は天蓋を指し懸け・地神は山河・大地を平等に成し給ふ、故に法性の空に自在にとびゆく車をこそ・大白牛車とは申すなれ、我より後に来り給はん人人は此の車にめされて霊山へ御出で有るべく候、日蓮も同じ車に乗りて御迎いにまかり向ふべく候、南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経。

                            日蓮花押


春初御消息

ははき殿かきて候事・よろこびいりて候。

春の初の御悦び木に花のさくがごとく・山に草の生出ずるがごとしと我も人も悦び入つて候、さては御送り物の日記・八木一俵・白塩一俵・十字三十枚・いも一俵給び候い畢んぬ。

深山の中に白雪・三日の間に庭は一丈につもり・谷はみねとなり・みねは天にはしかけたり、鳥鹿は庵室に入り樵牧は山にさしいらず、衣はうすし・食はたえたり・夜はかんく鳥にことならず、昼は里へいでんとおもふ心ひまなし、すでに読経のこえも・たえ観念の心もうすし、今生退転して未来三五を経ん事をなげき候いつるところに・此の御とぶらひに命いきて又もや見参に入り候はんずらんと・うれしく候。

過去の仏は凡夫にて・おはしまし候いし時・五濁乱漫の世にかかる飢えたる法華経の行者をやしなひて・仏にはならせ給うぞとみえて候へば・法華経まことならば此の功徳によりて過去の慈父は成仏疑なし。

故五郎殿も今は霊山浄土にまいりあはせ給いて・故殿に御かうべをなでられさせ給うべしと・おもひやり候へば涙かきあへられず、恐恐謹言。

  正月二十日                    日蓮花押

   上野殿御返事

   申す事恐れ入つて候、返返ははき殿一一によみきかせまいらせ候へ。


法華証明抄

                     法華経の行者 日蓮花押

末代悪世に法華経を経のごとく信じまいらせ候者をば法華経の御鏡にはいかんがうかべさせ給うと拝見つかまつり候へば、過去に十万億の仏を供養せる人なりと・たしかに釈迦仏の金口の御口より出でさせ給いて候を・一仏なれば末代の凡夫はうたがいや・せんずらんとて、此より東方にはるかの国をすぎさせ給いておはします宝浄世界の多宝仏わざわざと行幸ならせ給いて釈迦仏にをり向いまいらせて妙法華経皆是真実と証明せさせ給い候いき、此の上はなにの不審か残るべき・なれども・なをなを末代の凡夫は・をぼつかなしと・をぼしめしや有りけん、十方の諸仏を召しあつめさせ給いて広長舌相と申して無量劫より・このかた永くそらごとなきひろくながく大なる御舌を須弥山のごとく虚空に立てならべ給いし事は・をびただしかりし事なり、かう候へば末代の凡夫の身として法華経の一字・二字を信じまいらせ候へば十方の仏の御舌を持つ物ぞかし、いかなる過去の宿習にて・かかる身とは生るらむと悦びまいらせ候・上の経文は過去に十万億の仏にあいまいらせて供養をなしまいらせて候いける者が・法華経計りをば用いまいらせず候いけれども・仏くやうの功徳莫大なりければ・謗法の罪に依りて貧賤の身とは生れて候へども・又此の経を信ずる人となれりと見へて候、此れをば天台の御釈に云く「人の地に倒れて還つて地より起つが如し」等云云、地にたうれたる人は・かへりて地よりをく、法華経謗法の人は三悪並びに人天の地には・たうれ候へども・かへりて法華経の御手にかかりて仏になると・ことわられて候。

しかるにこの上野の七郎次郎は末代の凡夫・武士の家に生れて悪人とは申すべけれども心は善人なり、其の故