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日蓮大聖人・池田大作

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窪尼御前御返事 
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このやまひは仏の御はからひか・そのゆへは浄名経・涅槃経には病ある人仏になるべきよしとかれて候、病によりて道心はをこり候なり、又一切の病の中には五逆罪と一闡提と謗法をこそおもき病とは仏はいたませ給へ今の日本国の人は一人もなく極大重病あり所謂大謗法の重病なり今の禅宗念仏宗律宗真言師なりこれらはあまりに病おもきゆへに我が身にもおぼへず人もしらぬ病なりこの病のこうずるゆへに四海のつわものただいま来りなば王臣万民みなしづみなんこれをいきてみ候はんまなここそあたあたしく候へ。

入道殿は今生にはいたく法華経を御信用ありとは見え候はねども・過去の宿習のゆへの・もよをしによりて・このなが病にしづみ日日夜夜に道心ひまなし、今生につくりをかせ給ひし小罪はすでにきへ候いぬらん、謗法の大悪は又法華経に帰しぬるゆへに・きへさせ給うべしただいまに霊山にまいらせ給いなば・日いでて十方をみるが・ごとくうれしく、とくしにぬるものかなと・うちよろこび給い候はんずらん、中有の道にいかなる事もいできたり候はば・日蓮がでしなりとなのらせ給へ、わずかの日本国なれどもさがみ殿のうちのものと申すをば・さうなくおそるる事候、日蓮は日本第一のふたうの法師ただし法華経を信じ候事は一閻浮提第一の聖人なり、其の名は十方の浄土にきこえぬ、定めて天地もしりぬらん・日蓮が弟子となのらせ給はば・いかなる悪鬼なりともよもしらぬよしは申さじとおぼすべし、さては度度の御心ざし申すばかりなし、恐恐謹言。

さるは木をたのむ・魚は水をたのむ・女人はおとこをたのむ・わかれのをしきゆへにかみをそり・そでをすみにそめぬ、いかでか十方の仏もあはれませ給はざるべき、法華経もすてさせ給うべきとたのませ給え・たのませ給え。

  八月十六日                     日蓮花押

   妙心尼御前御返事


窪尼御前御返事

                    弘安二年五月 五十八歳御作

御供養の物数のままに慥・に給い候、当時は五月の比おひにて民のいとまなし・其の上宮の造営にて候なり、かかる暇なき時・山中の有り様思ひやらせ給いて送りたびて候事御志殊にふかし。

阿育大王と申せし王はこの天の日のめぐらせ給う一閻浮提を大体しろしめされ候いし王なり、此の王は昔徳勝とて五になる童にて候いしが釈迦仏にすなのもちゐをまいらせたりしゆへにかかる大王と生れさせ給う、此の童はさしも心ざしなし・たわふれなるやうにてこそ候いしかども仏のめでたくをはすればわづかの事も・ものとなりて・かかる・めでたき事候、まして法華経は仏にまさらせ給う事星と月とともしびと日とのごとし、又御心ざしもすぐれて候。

されば故入道殿も仏にならせ給うべし、又一人をはする・ひめ御前も・いのちもながく・さひわひもありて・さる人の・むすめなりと・きこえさせ給うべし、当時もおさなけれども母をかけてすごす女人なれば父の後世をもたすくべし。

から国にせいしと申せし女人は・わかなを山につみて・をひたるはわをやしなひき、天あはれみて越王と申す大王のかりせさせ給いしが・みつけてきさきとなりにき、これも又かくのごとし・をやを・やしなふ女人なれば天もまほらせ給うらん仏もあはれみ候らん、一切の善根の中に孝養父母は第一にて候なれば・まして法華経にてをはす、金のうつわものに・きよき水を入れたるがごとく・すこしももるべからず候、めでたし・めでたし、恐恐謹言。


  五月四日                      日蓮花押

   くぼの尼御前御返事

  このなかの御くやうのものは・ところところ略して法門を書写し畢んぬ。

妙心尼御前御返事

                    弘安二年十一月 五十八歳御作

御そうぜんれう送り給い了んぬ、すでに故入道殿のかくるる日にて・おはしけるか、とかう・まぎれ候いけるほどに・うちわすれて候いけるなり、よもそれにはわすれ給はじ。

蘇武と申せし男は漢王の御使に胡国と申す国に入りて十九年めもおとこをはなれ・おとこもわするる事なし、あまりのこひしさに・おとこの衣を秋ごとにきぬたのうへにて・うちけるが・おもひやとをりて・ゆきにけん・おとこのみみにきこへたり、ちんしといいしものは・めおとこ・はなれけるに・かがみをわりて・ひとつづつ・とりにけり、わするる時はとりとび去りけり、さうしといゐしものは・おとこをこひてはかにいたりて木となりぬ、相思樹と申すはこの木なり、大唐へわたるにしがの明神と申す神をはす・おとこのもろこしへ・ゆきしをこひて神となれり・しまのすがたおうなににたり、まつらさよひめといふ是なり、いにしへより・いまにいたるまでをやこのわかれ主従のわかれ・いづれかつらからざる、されども・おとこをんなのわかれほど・たとげなかりけるはなし、過去遠遠より女の身となりしが・このおとこ娑婆最後のぜんちしきなりけり。

 ちりしはな・をちしこのみも・さきむすぶ・いかにこ人の・返らざるらむ。

 こぞもうく・ことしもつらき・月日かな・おもひはいつも・はれぬものゆへ。